かみ

かみ
I
かみ【上】
空間的・時間的に連続したものの上の方。 初めの方。 高いところ。
❶連続したものの初めの部分。
(1)川の上流。 また, その流域。

「川の~の方」「泊瀬(ハツセ)の河の~つ瀬に/古事記(下)」

(2)昔。 今からみてずっと前。

「その~」「~つ代/玉勝間」

(3)初めの部分。 いくつかに分けたものの最初のもの。 (ア)月や年の初めの部分。

「~半期」「~期」「~の十日」(イ)書物の初めの部分。 「~の巻」(ウ)和歌で初めの三句。 「~の句」

❷位置の高い所。
(1)上の方。

「この山の~にありといふ布引の滝見にのぼらむ/伊勢 87」

(2)身体の腰から上の部分。

「腰より~は人にて, しもは蛇なる女/宇治拾遺 4」

❸中心地としての京都についていう。
(1)皇居のある所。 京都。 みやこ。 また, 関西地方。

「~方」「~の便りにあがる米の値(芭蕉)/炭俵」

(2)京都により近い所。

「~つけの(上野)」「~つふさ(上総)」

(3)京都で御所に近い方。 北の方。

「烏丸(カラスマ)通りを~の方へ行く」

(4)上座。 上席。

「しうとの~へなほる/狂言・庖丁聟」

(5)舞台の上手(カミテ)。
❹地位・身分の高いこと。 また, その人。
(1)高位の人。

「~は国王よりしもは万民に至るまで」

(2)天皇・君主・将軍・大名などをさす。
(3)政府・朝廷をさす。

「お~のお達し」

(4)主人。 主君。
(5)他人の妻に対する敬称。

「~さま」「(お)~さん」

(6)料理屋の女主人などの称。

「お~(女将)」

~漏(モ)り下(シモ)潤(ウルオ)う
上に立って政治を行う人が恵みを施せば, 下の人民は潤って豊かになる。
~を学ぶ下(シモ)
上に立つ者のすることは, 下の者がまねる。 上に倣(ナラ)う下。 上の好む所, 下これに倣う。
II
かみ【佳味】
(1)よい味。 よい味の食べ物。
(2)よい趣。
III
かみ【加味】
(1)味をつけ加えること。
(2)ある事物の上にさらにつけ加えること。

「出席率を~した成績」

IV
かみ【神】
人間を超えた存在で, 人間に対し禍福や賞罰を与え, 信仰・崇拝の対象となるもの。
(1)(ア)宗教・習俗において, 信仰・崇拝・儀礼・神話・教義などの中心となる位格・存在。 日本の神道や民俗の祭りでまつられる対象, またはユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの超越的絶対者。 仏教では, 仏や菩薩の権現・守護者などとされ, 仏とは区別される。 「~に祈る」「~のお告げ」(イ)哲学で, 世界や人間の在り方を支配する超越的・究極的な最高存在。
(2)(ア)日本の神話で, 神武天皇より前に登場する人格神。

「天地初めて発(ヒラ)けし時, 高天の原に成れる~の名は/古事記(上訓)」(イ)天皇。 「大君は~にしませば/万葉235」(ウ)人間に危害を加える恐ろしいもの。 蛇・虎など。 「韓国(カラクニ)の虎といふ~を/万葉 3885」(エ)かみなり。 なるかみ。 「~いとおそろしう鳴りたれば/枕草子 99」

~掛けて
神に誓って。 決して。

「~うそは言っていない」「~間違いない」

~と仏は水波(スイハ)の隔(ヘダ)て
神と仏とはちょうど水と波とのようにただ形が違うだけで, もとは同体である。
~ならぬ身(ミ)
全知全能の神ではない身, すなわち人間。 凡夫。

「~では知るよしもない」

~の正面(シヨウメン)仏(ホトケ)の真尻(マジリ)
〔「真尻」は後ろの意〕
神棚は正面の高い所に, 仏壇は陰に設けよの意。
~の存在証明(ソンザイシヨウメイ)
信仰における神の存在を, 理性によって哲学的に証明すること。 中世のスコラ哲学・近世哲学・キリスト教神学などにおいて試みられた。 その形式により, 存在論的証明・宇宙論的証明・目的論的証明・道徳的証明などに分けられる。
~の見えざる手
市場経済の自動調節機構をいう語。 経済活動を個々人の私利をめざす行為に任せておけば「神の見えざる手」により社会全体の利益が達成される, というアダム=スミスの経済社会思想を示す語。
~は正直(シヨウジキ)の頭(コウベ)に宿(ヤド)る
神は正直な人間を守る。
~は非礼(ヒレイ)を受けず
〔論語(八佾注)〕
神は, 神をまつるべきでない邪悪な人間がまつってもその心を受けない。 神は礼儀にはずれた物事は受納しない。
~は見通し
神にはどんなことでも見えているから, 偽ることはできない。 神仏はお見通し。
~も仏(ホトケ)もない
慈悲を垂れ人を救う神も仏もいない意で, 世間の無情・無慈悲などをはかなんでいう語。
V
かみ【紙】
(1)植物の繊維を水中で密にからみ合わせ, 薄く平面状にのばして乾燥したもの。 中国, 後漢の蔡倫(サイリン)がその製法を発明したといわれる。 絵や文字を書いたり, 物を包んだり, 障子や襖(フスマ)に貼ったりするのに用いる。 和紙はミツマタ・コウゾ・ガンピなどの靭皮(ジンピ)繊維を原料とし, 手すきで作る。 洋紙は木材パルプなどを原料とし, これをくだいて溶かし, サイズ剤・填料(テンリヨウ)・色素などを加え, 抄紙機で機械的に仕上げる。 最近は合成繊維からも作られるようになった。
(2)じゃんけんの手の一。 開いたてのひらで示す。 ぱあ。
VI
かみ【長官】
律令制四等官の最高位の官職の総称。 官司によって表記が異なる。
VII
かみ【髪】
(1)頭に生えている毛。 髪の毛。

「~をとかす」

(2)頭髪を結った形。 かみかたち。

「お下げ~」「日本~」

~上(ア)・ぐ
(1)髪を結う。

「今より以後, 男女悉(コトゴトク)に~・げよ/日本書紀(天武下訓)」

(2)「髪上げ{(2)}」をする。

「女は裳着, ~・げ, 男につき, 宮仕へし/宇津保(藤原君)」

(3)「髪上げ{(3)}」をする。

「皆~・げて御饌(オモノ)参らする有様/栄花(音楽)」

~洗う
(女性が)汗ばみ汚れやすい髪を洗う。 ﹝季﹞夏。
~の長きは七難(シチナン)隠(カク)す
女の髪の長いことは, 他の欠点を隠してしまう。 色の白いは七難隠す。
~を下(オ)ろ・す
(1)髪を切って仏門に入る。 剃髪(テイハツ)する。
(2)髪を結わずに, 下に垂らす。
~をはや・す
(1)髪をのばす。
(2)〔「はやす」は「切る」の忌み詞〕
長い童髪を切って元服する。

「この路次にて~・せと申し候ふ程に/謡曲・元服曾我」


Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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